メッキと塗装の技術情報Technical info
メッキと塗装のコストダウンのポイント2
表面処理の条件=コストダウンとトラブル防止のポイント
最適な表面処理を行うために明示すべき条件を具体的に示します。
①表面処理の目的やその製品の使用方法を表面処理業者にはっきり伝える。
どのくらいの耐食性が必要なのか、それとも特別な機能が必要なのか、装飾性が目的なのか、などの表面処理をする目的とその製品の設置場所やどのように使われる物なのかなどをまずはっきり示すことが重要です。それにより表面処理メーカーは加工の種類や方法、工程、グレードなどを決定します。つまり処理単価もここで大体決まります。
●表面処理の目的
車の足回り部品なので塩水噴霧〇〇時間パスが必要、屋外設置で10年以上保証したい、耐食性はそれほど必要ない、ピカピカにしたい、艶消しにしたい、防眩性が欲しい、滑るようにしたい、製品のキズや打痕を消したい、カラー化で差別化したい、高級感を持たせたい、メタリック調にしたい
●製品の使用方法、使用環境
屋外で使うか屋内か?雨や風、紫外線はあたるのか?
屋上に設置する、水中で使う、携帯電話の外装部品(→耐摩耗性が必要)
風呂場、海岸、腐食性ガスが発生するところなどで使う
熱がかかる、摩耗しやすい、車の足回り部品、内装部品、機械の制御盤ボックス、組み立て後はほとんど触ることも、見ることも無い
②ラックに掛けやすい形状にする。
(ラックは業界、地方によりハンガー、フック、治具、タコ、ひっかけなどと呼ばれています)
バレルメッキ以外のメッキや塗装は作業のためにラックに掛けたり、ぶら下げる場所が必要になります。また電気メッキの膜厚のバラツキはラックの接点数の二乗に反比例するといわれています。つまり接点数が1箇所より2 ヶ所になれば膜厚のばらつきは1/4、3 箇所なら1/9 になります。製品に対する接点の位置、数はメッキの品質に非常に影響します。
塗装は網置きでも出来る場合がありますが、メタリックなど何回も塗り重ねる塗装は網跡が残ったり、裏面がざらざらになったりするためNG になります。
ラッキング方法を考慮せずに設計された製品は、作業効率が悪いため処理費が高くなったり、ラック跡が残り耐食性や見栄えが悪くなったり、ひどいときには表面処理作業そのものができない場合があります。ラッキング方法はメッキと塗装の作業と品質や処理費用に非常に重要な要素になります。
③有効面をはっきりさせる。
製品とラックの接点はメッキや塗装が付かないラック跡が残ります。その為ラック接点は非有効面に取らなければなりません。有効面(メッキや塗装が必ず必要な場所、見える場所)と非有効面(付いても付かなくてもどちらでも良い場所)、付けてはいけない場所をはっきりさせるだけで作業効率が大幅に改善し、一挙に大幅なコストダウンになることがあります。
④無駄に過剰なスペックにしない。
最適な表面処理の仕様は製品の使用方法、使用環境、保証年数などに合わせて決定します。キャス試験などの促進腐食性試験の耐久時間を無意味に長くするとそれだけ表面処理のグレードが上がることになりコストアップに繋がります。(7ページ参照)
電気メッキの膜厚はかなりばらつくものです。1つの製品中でも測定場所によっては2倍以上の差があることもあります。通常はそれでまったく問題はありませんが、「Niメッキ5.0 ~ 8.0μ」と図面に記載した場合はその範囲外は不良になってしまいます。「Niメッキ〇μ以上」では駄目なのでしょうか?電気メッキの場合の膜厚精度は非常に大きなコスト要因になります。
塗装の場合の膜厚精度は「30μ以上」、「10μ~ 30μ」くらいの幅が必要になります。
⑤限度見本を作る。
特に塗装の場合は色や艶のばらつき範囲、付着した異物の大きさや数などを限度見本によりはっきり決めることが単価の決定と後々のトラブル防止にも役立ちます。これも過剰に厳しく設定すればコストアップになりますし、ゆるすぎてもトラブルになります。
外観基準は1級面、2級面などの基準設定、表面と裏面の基準を変える工夫、コンタミやブツの大きさは顧客と塗装業者間で取り決めた統一基準表や限度見本などで良品と不良品の範囲を決めることが重要です。