簡単そうで、そうでもなくお金もかかるめっき剥がし メッキ
良くお客様に言われるのですが「めっき剥がしくらい、液に入れておくだけでしょ。もっと安くしてよ。」
実際その品物には、赤や青の塗装とその下にニッケルストライク、金ストライク、銀ストライク、光沢ニッケル、クロムめっきや黒ニッケル、黒クロム、パラジウム、金、銀、スズ‐コバルト、ロジウム、ルテニウム、銅、スズ、亜鉛、などなど、何重にも塗装やめっきが付いているにもかかわらずそう云われます。
塗装もプライマー、コート、カラー、メタリックなど何回も違う種類の樹脂を塗り重ねています。
プラスチックである塗装と金属であるめっきが、同じ薬品、例えば塩酸で同時に溶けない事は容易に想像できると思います。
それでそう云われる方に質問です。
銅素材の上に銅めっきした物、ニッケル合金の上にニッケルめっきした物などを溶かす場合にめっき剥離液はめっきだけ溶かしたら、素材は溶かさずに自動的に溶解停止になるのでしょうか?
こういう風に聞かれたら誰でも答えは「ノー」と言うでしょう。銅めっきを溶かす液は銅の素材もどんどん溶かすでしょう。
素材が溶ければ表面は荒れてざらざらになり、研磨してもきれいにならないこともありますし、素材の厚みが薄くなることもあります。最後は素材も無くなってしまうでしょう。
具体的に言いますと弊社では塗装の剥離剤は樹脂や素材の種類により6種類使い分けます。
ニッケルめっき剥離は硝酸と酸性、アルカリ性の液の3種類使います。この酸性の剥離剤はステンレスを溶かしてしまいますが、アルカリの剥離剤はステンは溶かしません。
よって、酸性剥離のタンクは塩ビ、アルカリのそれはステンです。
黒ニッケル、クロム、黒クロムは塩酸で溶かします。金、パラジウムはそれぞれの専用液、ロジウムめっきは剥離はできません。
溶かす事はできますが、素材も溶けてしまいます。
それでロジウムを溶かす時はロジウムめっきのピットの小さな穴を通して電解で下地のニッケルめっきを溶かしますが、素材が荒れる可能性が大です。
銅めっきや亜鉛めっきは弊社では加工していませんので剥離液も持っていません。
この様に塗装やめっきの剥離は、表面から順番に1層ずつ溶かしていくので樹脂の種類、めっきと素材の金属種など分からない時には慎重に様子を見ながら溶かしていきます。
その液のそばから何分も離れられない事もあり、非常に経験と感と観察力が必要です。
また剥離作業は常にある仕事ではないので、その時だけ温度を上げて使う事もあり、非常に効率が悪く通常数も数個しかないのでサービスで処理しているのが現状です。
これらの剥離液は金属濃度が濃く、沈殿しないようにキレート剤などが入れてあるため廃液処理は自社内ではできないので、専門の業者にお願いします。